我が家の庭には、名前のわからないお花があります。
背が高くて、とても大きな鉢にうえられています。
昨日、水やりを忘れてしまいました。
水やりを忘れたことさえ忘れていました。
今朝障子をあけ何気なく庭を見渡すと、
私は一瞬のうちに、罪悪感におそわれました。
いつも鬱陶しいくらい元気に空にむかってのびていた頭が今にも地面につきそうな程に落ち、
大きなお花の変わり果てた姿が、そこにあったのです。
何かを失ったかのように激しく項垂れ、まるで悲しみに押しつぶされている様な大きな、いや、大きかったお花。
茎はおれまがり花も枯れかけ、見る影もありません。
おおよそもとに戻る気配などありません。
「こんなにすぐ・・。」
それでも、水をたくさんあげました。
後ろめたさと一緒に障子をしめたあと、
いつものように掃除をしたりテレビをみたり、食事をとったりしました。
考えてみれば、久々のお休みでした。
充分に体を休め、自由にピアノを弾いたり本を読んだり、悠々と時を過ごしました。
午後になりベランダで洗濯物を干そうと顔を空に向けた時、思い切り打たれた強い日光。
あ、そういえば、あれからどうなったのかな。
うまく忘れていた大きなお花のことを、思い出しました。
「ごめんね、こんなにあっという間に変わっちゃうなんて思ってなかったから。
水やりも簡単に忘れちゃったんだ。
また元気な姿がみたいんだけどな。」
おそるおそる障子をあけ、庭に目をやりました。
あれ?拍子抜けとはまさにこのこと。
あっけらかんと空にむかって頭をあげ、
生き生きとした大きなお花がいつものようにそこにあるではありませんか。
あんなに項垂れといて、水をあげたらケロッともとに戻るなんて。
まったく、感情の起伏の激しい大袈裟なやつだわ。
振りまわされた方はたまったもんじゃないわね!
でもその分、
心配させたり喜ばせたり
様々な感情を周りに生ませていく大きなお花。
そういう生き方も悪くないなと、少し思った。
何にせよ、元気のない姿はもう見たくないから
水やりは忘れないようにしよう、と、思いました。